こちらはLISM2024年10月号に掲載されていた「建築家図鑑」VOL.05の記事です。掲載誌の配布期間が終わっているので、こちらにアップいたします。
建築家:岩西智宏さんは、建てようネット和歌山では話しやすい雰囲気が人気。和歌山市民図書館の最初の基本設計を手がけたり、街づくりに関係する事業にも積極的に携わっている建築家です。今回はそんな岩西さんに、お話を伺いました。
ランドスケープの考えを家づくりにも
建てようネットスタッフ(以下ス)>岩西さんはご自身の家づくりの特徴は何だと思いますか。
岩西智宏(以下 岩)>私は大学の頃から「ランドスケープ」(都市や公園などの空間デザインのこと)の考え方を取り入れ設計を行ってきました。空間構成を考える際は、場所の目的を一つに決めないことが多いんです。階段でも、ベンチになるし、そこで人と話をしてもいいし、ご飯を食べてもいい…というような。家づくりでもその考えがあって、場所の目的を決めすぎず、どこでも色々なことができる空間を目指しています。あと建物自体は動きがないものなので、そこに木々を取り入れ、風で木々がそよぐことで空間に動きが生まれます。
ス>なるほど。この事務所にも地面から事務所の真ん中を突き刺すように木が植っていますもんね。建物の中に居ても、外の世界の動きや季節の移ろいを感じられていいですよね。
THE HOUSE 外観:この家のシンボルである三角形の屋根
庭:セカンドリビングとして休日のBBQやドックランとして利用している
LDK:三角屋根を活かした高い吹き抜け空間
建て主のこだわりを引き出していく
岩 > あとは建て主さんに合ったオートクチュールな家づくりも心がけています。私の建て主さんたちはこだわりがたくさんある方も多く、その個性に合わせた家づくりをしていくのが好きなんです。
ス>岩西さんはフランクな雰囲気で、建て主さんたちのこだわりを引き出す話しやすさがありますよね。
岩>実は結構人見知りなんですけどね(笑)プレゼンだったりも不得意だと思っているし「喋るのが上手い」とは思っていないです。
ス>確かに本当に「喋るのが上手い人」って相手の考えを思った方に持っていくのが上手ですよね。でも岩西さんはそうではないと感じます。
岩>そうしてしまうとゴールって一つじゃないですか。でも私はそうじゃなくて、相手の本当に求めてることを一緒に見つけたいし、人と話すことでいろんな価値観や言葉を吸収して取り入れていきたいです。
ス>岩西さんは街づくりに積極的に関わってられますよね。
岩>そうですね。今は和歌山市の中心部に若者(学生)を集める取り組みに関わっています。今はそのプロジェクトのゆく末がすごく楽しみなんです。
家を考えるタイミングの変化
ス>コロナ禍を越えて、最近の建て主さん達の状況に変化はあったでしょうか。
岩>以前は、ご結婚される前、新婚、お子さんが小学校に上がるタイミングでお家を建てようと考えられる方が多かった印象です。でも最近はセカンドハウスであったり、40代・50代になって子育てが落ち着いて自分たちのことに時間を使えるようになった世代の方から趣味を活かした家づくりを依頼されることも増えましたね。また、家を【終の住処】としてのみ考えるのではなく、「貸す」「住み替える」という選択肢を考えてみるのもいいかもしれません。
ス>なるほど…ご家族のかたちがしっかりと見えてきたり、将来や老後が見えてきた時というのもひとつの家を建てるタイミングなのかもしれないですね。
岩>家を建てたい!と思った時が建てどきなんだと思います。この記事を読んでいる方、建築家が少しでも気になった方は、絶対に家にこだわりがあると思うんです。「普通の家でいい」という方も話していくとこだわりがたくさん出てくるもの……ぜひそのこだわりを一度私たち建築家に話してみてほしいです!