こちらはLISM2024年5月号に掲載されている「建築家図鑑」VOL.02の全編記事です。
建築家:谷奥愼司さんは、宅地建物取引士の免許をもち、不動産鑑定事務所に勤務した経験もある建築家。建てようネット和歌山でもたくさんのお家を手がけるベテランです。今回はそんな谷奥さんに、お話を伺いました。
土地探し×資金相談×低コスト実現 ベテラン建築家の魅力に迫る!
建てようネットスタッフ(以下ス)>谷奥さんには建てようネット和歌山創立当初から、たくさんのお家を手がけていただきました。
谷奥愼司(以下谷)>先日、改めて数えてみたら新築では34棟、リフォームは今させていただいているもので30軒になっていました。
谷奥さんが建てようネットで手がけたお家からピックアップしてご紹介↓
●建てようネットで建てた家「大屋根の家」
外観
2Fホール部分
●建てようネットで建てた家「栄谷の家」
外観
ダイニングからのキッチン
●建てようネットで建てた家「海の近くの白い家」
竣工時外観
竣工して4年後のリビング
土地探しの知識が豊富=心強いパートナー
ス>谷奥さんは、宅地建物取引士の資格ももちろん取得されていて、新築を望む方で「土地探しからスタート」というお客様のサポートができることも大きな魅力ではないかと思います。
谷 >「土地探しから」という方は、まず不動産屋さんに行って土地を紹介してもらうかと思いますが、どんな土地がいいのかご自分たちだけではわかりにくいもの。また家づくりにかけられる予算は限られていますから、その予算とのバランスを考えながら探す必要があり、私の建て主さんでも長い方だと「5年間土地探しをしている」という方もいました。
設計だけでなく土地探しの時も建築家がいれば、住みたい家がどんな場所・広さ・形状の土地で叶えられるのかというアドバイスができますし、その土地のデメリットもしっかり見極めますよ。1区画で売りに出されている土地は、宅地になっているか、水道や排水などがちゃんと整っているか、なども大切です。土地の購入を考えるときに車の入れ方や家の配置がわかるように簡単なプランをすることもあります。あとは変形地だったり、平地でなくても建築家ならその土地に家を建てることもできます。そういう土地はお手頃な価格で手に入ることが多いので、建築上問題ないかどうかしっかり調べた上で購入できれば得ですよね。
敷地に難があっても建築家なら…?!
ス>今まで建てられたお家の中で敷地に難があったりして印象に残っているお家はありますか?
外観 奥様の自室
谷 >「山並みを望む家」ですね。土地に高低差があってお隣の土地との間に擁壁もあったのですがそこにヒビが入っている、という状態でした。最初は耐震を含んだ家だけのリフォームをご希望だったので、その図面を作っていたのですが、途中で「やっぱり土地自体も安心できるようにして新築にしたい」となりました。それなら…とヒビの入った擁壁を取り壊し、安全な層まで杭を打ち込み、下から立ち上がる高基礎をつくり、その上に新築の住宅を建てました。敷地ごと不安を解消できたので、とても安心していただけたと思います。
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ス>「段差のある家」も土地に人の身長ほどの高さの高低差がありましたね。
竣工時外観 建設前の敷地
谷>「段差のある家」は建て主さんが、市内でも暮らしやすく利便性がいい人気のエリアで土地探しをされたので、なかなか普通の土地であると予算に合うところがみつかりませんでした。しかしこの土地は、そんなエリアにありながら、段差があったことでかなりお値打ちでした。ここに土を入れて土地の高さをすべてを同じにすることもできましたが、それをしてしまうとかなり費用がかかってしまいます。そこで、この段差を活かしたプランを考え、高さのある基礎を作りました。玄関と水回り、そして子ども部屋になった洋室1間は道路と同じ高さに。段差の下の部分に降りていくと、ご夫婦の寝室と、高い基礎を活かしたシェルターのような収納、そして寝室から続くウッドデッキとプライバシーが守られたお庭。2階には太陽光が入る明るいLDK。
ご家族の暮らしたいエリア、間取り、安全性のすべてを叶えた家を作ることができました。
寝室と収納 庭から 2階LDK
ス>谷奥さんが設計されたからこそ叶えることができたお家のかたちですね。
家づくりで一番気になる「資金」の相談も
ス>土地探しをされているときにも「お金」の部分の話は出てきていましたが、谷奥さんは「資金相談」の面でもお客様の力になっておられますよね。
谷>家づくりでどういう時期にどのくらいのどういう種類のお金がかかるのか、皆さんほとんどが初めての家づくりなので、わからないですよね。私の事務所では、具体的にどのタイミングでいくら必要か等わかりやすくシミュレートできるシートを作って、お客様に使っていただいています。また、住宅ローンを借りる時の銀行選びのアドバイスも致します。ローンセンターへの相談に一緒に行かせていただくこともあります。他の建築家さんはどこまでされているのかわからないですが…
ス>他の建築家さんだと、タッグを組んだファイナンシャルプランナーさんにその部分は任せる方が多いかな、と思いますね。谷奥さんには建てようネット和歌山で「住宅ローン・家づくり資金」の勉強会をするときにも、講師としていつもお世話になっています。「お金」が心配じゃない方はいらっしゃらないので、知識がある谷奥さんを心強く感じられるお客様も多いのだと思います。
コストを抑える工夫と暮らしやすさの確保と
ス>谷奥さんはコストの面でも頼りになる、と思っています。コストを抑える工夫は例えばどんなものがあるでしょうか。
谷>一つの例としては、建て具などもすべてを一からオリジナルでつくっていく建築家さんも多いですが、私の場合は、うまく既製品を取り入れていきます。もちろん室内のデザインに合うものを探してきて、建て主さんが気にいる物を採用します。
家を建てるのはとてもお金がかかることですが、建て主さんのこれからの暮らしのためにも、少しでもコストを抑えられるように考えたいと思っています。
ス>コストを抑える工夫をされる谷奥さんも断熱を重視する印象があります。
谷>「断熱」は家の暮らしやすさに直結する部分です。コストを抑えても「暮らしやすさ」に影響が出ては本末転倒です。私はいつもそこは妥協したくないと考えています。国土交通省が制定している「断熱等性能等級」では4以上になるようには以前から計画をしています。断熱等級4は「平成28年 省エネ基準」と同等で、2022年に等級5〜7が新設されてからは、一次エネルギー消費量等級も併せて等級5以上を目安に計画しています。
断熱性能をあげることで、「省エネルギー住宅」も目指すことができます。もちろん和歌山は日照時間が長く、平地は温暖な気候ですから、必要ないところまで断熱をすることは無いと思うのですが…
ス>また、谷奥さんは工事が始まってからも現地にたくさん行かれるように思います。
谷>そうですね。私は基本設計の打ち合わせの段階から3DCGを用いて、建て主さんにもこれからつくる家のイメージがしっかり伝わるようにしていますが、それでもやっぱり現場で見ていただいた方がわかりやすいことも多いと思います。完成したときに「思った感じじゃない…」と思う部分を減らすためにも、現場で完成した時のイメージがつかめるような打ち合わせを多く行います。また現場に通って、工事を見守っていただいた回数が多いと、それも完成する家への愛着につながるのではないかと思います。
ス>「工事が始まってから現場をたくさん見る」というのは一般的なメーカーさんだと難しい場合も多いので、これも建築家と家を建てる時の楽しみの一つと言えそうです。
「家を建てたい」と思っているあなたへ
ス>ぜひ家づくりは楽しんでいただきたいと私たちも考えていますが、谷奥さんからもこれから家を建てる方へのメッセージをお願いします。
谷>残念ながら今は、建築費が上がっていたり、家づくりに関係するお金について厳しいことが多い時代です。でもその中でも「家が建てたい」と思った方は一度建築家と話してみて欲しいです。土地選びでコストを抑える工夫をしたりもできますし、ご自分たちが欲しい家の理想を予算内でできるだけ叶えられるように建築家が一緒に考えます。
また土地探しや、家の形をご自分たちで考えて悩み、行き詰まってしまうこともあると思います。そんな時にも建築家は力になれます。相談相手としてどんどん頼ってください。私たちは家造りをたくさん手がけてきた経験があり、建て主さんの立場に立って考えますから、「家を一緒に建てていくパートナー」となるご自分たちに合う建築家をぜひ探してください。