建てようネット和歌山で建てた家 第215号
断熱を考えた場合、配置を含めて難しくなるのが吹き抜け。「空気の流れをLDK単体で計算するのではなく、建物全体に広げて循環させています。吹き抜けを家のセンターに持ってくることで、家中の温熱環境を一定に保ちやすくしています」と山中さん。建て主さんが要望していた「エアコン1台で家中を快適に」を実現。そこには太陽光の入射角から、サッシなど高効率な設備、高い気密性と緻密な計算が練られています。
断熱の要望に加え、今回大切にしたのが室内の明るさと木のぬくもり。山中さんは「窓を大きく明るさを取り入れると断熱に影響し、奥様たっての希望だったガスコンロを使うと木の使用率に制限が生まれる…この相反するものをどう一つにするか、ある意味建築家の腕が試されましたね(笑)」と。二極化したこの問題も、アイデアと知識で見事に突破。たっぷりの採光が贅沢にあしらわれた無垢材を照らします。
人にも家にも地球にも優しく
ハイグレードの気密と断熱性
今、国が推し進める建物の建築基準で、もっとも重要視しているのが断熱。建物の性能を上げることでエネルギーを少なく、社会全体で地球の省エネに貢献しようと国が動いています。「断熱の効果は、家にとっても家族にとっても、もちろん地球にとってもメリットだらけ。Y邸の設計をしたことで改めて実感しました」と話すのは、「想建築工房」の一級建築士・山中淳さん。木を良く知る達人であり、現在は断熱・気密のスペシャリストとしても活躍中です。
Y邸のご主人が建てようネットを訪れたのは4年程前のこと。「今住んでいる賃貸は、冬は結露が酷く夏は暑い。家を建てるなら絶対、高気密で高断熱!」と考えていたそうです。山中さんも当然、高気密・高断熱は意識して設計に携わっていましたが、ご主人の熱意に触発され、さらなる知識の更新を図ったそうです。「知るほどに奥深く、日本の四季、太陽の軌道、断熱と気密の関係性、換気システム、建材と全てを把握した上で、さらに施工業者にもその意図を知ってもらわないとはじまらない…。建て主さんとも綿密に打ち合わせをしましたが、現場にもよく赴きました。業界では〝山中は細かい〟と噂が回ったほどです(笑)」。今まで以上に、建て主さん×建築家×工務店の三者一体感が求められたといいます。ただ断熱材を厚くすればいいというわけではなく、建材一つ一つの隙間にさえ細心の注意を払い、コストバランスを考えながら気密と断熱の関係性を追求。24時間の第1種換気のほか、LDKの吹き抜けを家の真ん中に配するなど、全体で温熱環境を整えています。
さらにこだわりは共働きの奥様を助ける家事動線。「室内干しのサンルームからファミリークローゼット、洗濯機のある水回りまで一直線。夜に洗濯機を回して干して、仕事から帰ってきたら畳まずにハンガーのままクローゼットへ。これから家を建てる人には絶対おすすめ」と奥様。究極の快適と便利が、住む人を笑顔にします。
住宅データ
家族構成/ ご夫婦+お子さん2人
構造/ 木造在来軸組 2階建て
屋根/カラーガルバリウム 鋼板立平葺き
外壁/ カラーガルバリウム鋼板 金属サイディング張り
建築面積/ 74.07㎡ (約22.41坪)
延床面積/ 1F71.99㎡ (約21.78坪)
2F 58.12㎡ (約17.58坪)
計 130.11㎡ (約39.36坪)
敷地面積/ 262.60㎡ (約79.44坪)
担当建築家・工務店
設計・監理:山中淳(想建築工房)
施工:株式会社 創和建設